『希望雫』〜輪廻〜



  ぽたんっ・・・・・・

「ん・・・?」

顔に水が落ちて、目が覚める。
・・・雨漏り?って・・・私、どこにいたっけ?

「起きたのね?ようこそ、希望郷へ。」

暗闇に、鈴のような声が響く。
希望郷って・・・・・・?

「私はエスペラント。エスぺと呼んで。よろしくね、アヤちゃん。」

どうして・・・私の名前を・・・・・・
それに、私は今日はお墓参りに来ていたはず・・・

「あなたの心と、あなたを大事に思っている人があなたをここへと呼んだ。
 心が、壊れる前に・・・何があったのかしら?」

視界が明るくなって、目の前に綺麗で優しげな表情を浮かべた女性がいた。
その姿を見て、なぜかいてもたってもいられなくなった。

「ユイが・・・・・ユイが死んだの・・・」

ユイ。唯一人の、私の親友。
ずっと一緒にいるって言ってたのに、先に逝ってしまった。

「ユイが死んだのに、みんな笑ってて・・・
 ユイが死んだことなんて、なかったように日々が過ぎていって・・・
 もう、あの姿を見ることはないのに。
 あの声を聞くことはないのに・・・
 もう、会えないし話せないのに・・・!!」

私と、いつも一緒にいてくれたユイ。
私とは違って、明るくて優しくて。
その笑顔も、かわいくて、みんなに人気があった。
それでもいつも私と一緒にいてくれた。
私はまだ、ユイに言ってない。
『ありがとう、大好きだよ』って・・・・・・

「あなたはよくわかっているわね。
 でも・・・みんな、忘れているなんてことはないわ。」

「だって・・・!!」

「人間ってね、厄介な生き物なの。
 いつ死ぬかわからない・・・そんな世界で生きていく。
 信じられないほど、その死を自然に受け入れる。
 でも・・・それはね、“忘れる”わけじゃないのよ。
 覚えていて、尚且つ自分は生きていかなくちゃいけない。
 そのために、笑顔を見せる。
 いつまでも悲しんでばかりじゃ駄目なのよ。
 記憶を故意に変えることはできないし、忘れることもできない。
 死んでも、他の人の記憶の中では生き続けられる・・・それが人間なの」

エスペラント・・・エスぺは穏やかな調子で言葉を紡いでいる。
とても・・・とても、穏やかに・・・・・・・・・

「それに・・・
 身体が死んでも、魂は生きるわ。
 ただ、全てを忘れて輪廻の輪へと戻るだけ。
 そして、次に生まれ変わる時を待つのよ。
 大切だった人のそばへと、生まれる時をね・・・・・・」

穏やかなエスぺ。
でも・・・私には悲しんでるように見える・・・なんでだろう。

「あなたが悲しんでいたら、彼女はその輪に入ることができないわ。
 あなたは、彼女の死を乗り越えなければならないの。彼女のためにもね。
 あなたが幸せになって、初めて彼女は生まれ変われる。
 あなたと・・・あなたと将来を誓う、男性との子供としてね。」

私の子供として、ユイが生まれ変わる・・・・・?

どこか、寂し気なエスぺ。
どうしてそんなに寂しそうに・・・悲しそうにしてるの・・・・・・?

「彼女はあなたの心配をしているわ。
 いつまでも、笑顔を見せないから・・・
 彼女はあなたの笑顔が好きだったんでしょう?
 こんなにも大事に・・・大切に思われている。
 安心、させてあげないと・・・」

「・・・わかった。
 エスペ、ユイは私の子供になって生まれ変わるんでしょう?
 だったら、私の子供に生まれてよかったって思ってもらえるように頑張らなきゃ。
 ユイに心配されないように・・・
 ユイを、守っていけるように・・・・・・」

ユイと、将来また出逢えるように。
ユイに・・・生まれ変わりの輪に入ってもらわなきゃ。
ユイ・・・私は大丈夫。
私は、一人でやっていける。
ユイがいなくても、頑張るから・・・

「わかって・・・くれたようね。」

エスぺは微笑んで、空中から何かを取り出す仕草をした。

「これを、あげるわ。
 ユイちゃんがあなたのために作った雫。
 あなただけの、『希望雫』・・・」

手渡されたのは綺麗な、小さな結晶。
透き通って、不思議な色を放っている。
ユイが、私のために作った“雫”・・・?

「そろそろ・・・時間ね。
 アヤちゃん、今の気持ちを決して忘れないで。
 この雫はなくしては駄目。
 これの代わりは、ないのだから・・・・・・」

その言葉と共に、私の手の中にあった結晶がなくなった。
・・・何で??

「雫は、あなたの心の中に・・・
 アヤちゃん、元気でね。
 あなたの幸せを祈っているわ。」

その言葉を最後に、エスぺの姿は見えなくなった・・・


「アヤ!!」

「リン・・・くん?」

目を開けた私の目の前にいるのは、ユイによく似たユイの弟。

「よかった・・・っ!!
 アヤまで・・・姉ちゃんのところに行っちまうのかと思って・・・!」

抱きしめられた腕に、力が入る。

「こんな・・・っ心配させるなよ!」

心配・・・してくれたんだ・・・・・・

「もう・・・大丈夫。
 ユイに・・・誓ったから・・・・・・」

「アヤ・・・・・・
 俺、姉ちゃんの分までアヤのこと守るからっ!
 だから・・・姉ちゃんのところには・・・」

「行かないよ。約束したからね。」

「そっか。よかった・・・・・・・」

照れながら言う、リンくん。
ユイが生まれ変わってくるのは、きっとそう遠くない未来・・・
そう、感じた・・・・・・


「ユイちゃん、これでよかったのかしら?」

何もない空間へと、エスペラントが声をかける。

「うん。ありがとう、エスペラント。」

その空間へと、一人の女性が現れた。

「アヤだけが気掛かりだったの。
 ずっと、私が守ってきたアヤ・・・
 私から離れることがなかったアヤ・・・
 これからは、私の代わりにリンが守ってくれる・・・・・・」

穏やかに笑みを浮かべ、静かに話した。

「さぁ、輪廻の輪へと入りなさい。
 きっと、すぐに生まれ変われるわ。」

「えぇ。
 本当にありがとう、エスぺ・・・・・・」

その余韻の中、女性・・・ユイの姿が消えた。
残されたのは、ただ一人―――


「これで、私の仕事は終わり・・・
 あとは、祈るだけ。
 アヤちゃんとリンくんの幸せを・・・
 ユイちゃんの来世に不幸が訪れないことを・・・」

その呟きは、雫の落ちる音に掻き消される・・・

「さぁ・・・次はどんな人が来るのかしら・・・・・・」


☆★☆★☆★☆★☆★

『希望雫』シリーズ第・・・3話。
第2話まだ書き終わってなかったりするのですがね(爆
K先生が亡くなったと聞いてから、授業とかを使って約一日かけて書いたというシロモノ。
何が書きたかったんだろ・・・今となってはわかりません(汗
話おかしいし、何言いたいのかわからないし・・・
どうにかしてくれよ、ってな感じですね(笑/ぉい

     2004.10.09  ユウナ 



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