ぽた〜んっ・・・・・・・ぽた〜んっ・・・・・・ 水の滴り落ちる音が聞こえる――― どうして・・・? ここは・・・ここには・・・『水』なんてないのに がばっ 「・・・また、見た・・・」 近頃見る夢。 ただ、暗闇の中で水が落ちる音が聞こえるだけの夢。 普通、夢ってものは起きれば忘れるものなのにこの夢だけは覚えている。 ・・・それだけ、印象深いってことなのかな。 自分がどこにいるのかさえもわからないような暗闇で、一人で水の落ちる音を数える。 そんな夢。 そして、夢の中の唯一の登場人物はいつも思ってる。 “ここには『水』なんてないのに・・・”って。 水があるから水の落ちる音がするのに。 水がなければ、水が落ちるわけはないんだから。 いつも、私は夢を見た後に思う。 でも、それも今日でおしまい。 今日、私は希望も何もないこの世界とオサラバするんだから――― ぽた〜んっ・・・・・・・ぽた〜んっ・・・・・・ え・・・どうして・・・夢の中に? 私は夢で出てくるのと同じ場所にいた。 暗闇で、水の滴る音だけが聞こえる世界――― 「どうして・・・」 「何がどうして?」 鈴の鳴るような、澄んだ声が聞こえた。 この、暗闇には不似合いな声。 その声の主は―――私の夢の、唯一の登場人物・・・じゃなかった。 顔は見えない。依然暗闇のままだから。 だけど・・・なぜかわかる。 この人は、『人間』じゃない・・・ 私は何も答えられなかった。 できたことは、聞くことだけ。 「水があるのに・・・『水』がないの?」 「え?あぁ・・・ 水はあるわ。でも、もう一つの『水』がないの。」 彼女は謎掛けのように言った。 もちろん、私にわかるわけがない。 「どういう・・・意味?」 私が聞くと、彼女はころころと笑った。 もちろん、わかるのは声のみ。 「水は・・・なければ生きれないでしょう? もう一つの『水』もそれと同じ。」 「なければ・・・生きれないもの?」 『なければ生きれないもの』・・・ そんなもの、思いつかない。 「そうね、あなたにわかるわけがない。 あなたは“逃げた”んだから」 「逃げてなんか・・・!!」 「“逃げた”でしょう? 『世界』から・・・」 確かに・・・私は逃げた。 『希望』も何もない世界から――― 「なければ生きれないもの・・・ もう一つの『水』をあなたは持っていないわ。 だから、“逃げた”。」 何だか・・・この澄んだ声が異様に怖くなった。 全てを見透かされているようで。 「違うかしら?」 「違わ・・・ない・・・」 口が、勝手にそう言っていた。 そして、その途端全てが明るく、まぶしくなった。 「もう、わかったわね? もう一つの『水』が何なのか・・・」 『彼女』は声と同じように美しい人だった。 男女関係なく魅せることができるような・・・そんな女性。 「もう一つの『水』・・・ それは・・・『希望』のこと?」 「そう。 人間は、『希望』がなければ生きていけない。 ここは・・・『希望』がない人のための場所よ。 はい、これがあなたの『希望』。 あなた一人のための『希望』。」 そう言って渡されたのは何かの『雫』。 「これは・・・?」 「それは『希望雫』。 一人一人の為に“精製”されるもの。 それを作ったのは・・・あなたの『分身』よ」 『希望雫』・・・ 私の『分身』・・・? 「さぁ、行きなさい。 ここに・・・来ることはもうないわ。 その雫を決してなくさないで。」 「待って!!あなたは・・・?」 「私?私はここの『管理人』、エスペ。エスペラント。 ここに縛られ、生きていくモノよ。 それじゃあ、行きなさい。 もう、時間よ・・・」 彼女・・エスペラントが光に包まれた。 私は、『希望雫』を胸に抱き、歩き出した。 目を覚ますと、病院だった。 目の前には、家族の心配した顔。 そして――― 私の別れる寸前だった彼氏が・・・いつもは見せないような顔をして、私を見ていた。 彼――裕也は、私の『希望』をなくした張本人だ。 それが・・・どうしてここに? 「玲・・・ごめん。 俺・・・あの時はどうかしてたんだ。 許して・・・くれるよな?」 何を・・・言ってるの? 「許さない。出て行って。 私の前に・・・一生姿を見せないで。」 きっと・・・『希望雫』を貰う前の私だったら・・・ エスペに会う前の私だったら・・・許してただろう。 そして、そのまま生きていったと思う。 でも、今は違う。 もう、私は昔の『私』じゃない。 『希望』を貰った。 生きるためのもう一つの『水』を貰った。 だから、もう、裕也なんてイラナイ。 「なっ・・・」 一度も裕也にたてついたことのなかった私。 きっと裕也はそのつもりで来て、言ったんだろう。 でも、生憎とそんな私はもういない。 「さよなら、裕也。 もう二度と・・・会うことはないと思うけど元気でね。」 笑って言う。 不思議と、寂しさなんてものは微塵もない。 裕也は、信じられないような目で私を見て、病室を出て行った。 残ったのは家族たち。 「玲・・・おまえ・・・どうしたんだ?」 異口同音に聞かれた。 そんなの、答えてたらきりがない。 「全て、吹っ切れたの。」 エスペラントと『希望雫』のおかげで・・・ ありがとう、エスペ。 あの『夢』の謎はあんまり解けなかったけど、それでも十分。 私は、前を向いて『希望』を失わずに生きていくわ。 もう、二度とあなたの元へ行くことのないように――― ・・・・・ 「今回のお客さんも・・・ちゃんとわかってくれたようね。 ここは・・・『雫』を与える場所。 そして、私は『希望』の名前を持つモノ。 さぁ、次のお客さんは・・・誰かしら・・・?」 ぽた〜んっ・・・・・・・ぽた〜んっ・・・・・・ ===== 神野美月世玲菜様から、キリ番555の代理リクとして書いたもの。 リクの内容は完全オリジナルで『希望雫』。 『雫』といわれて思い浮かんだのが『水』だったという かなり単純な理由から、こんなものになりました。 エスペラントはどこか気に入ってます。 ひょっとしたらこれでシリーズとして書き始めるかも。 あ、お持ち帰りは美月のみでお願いします。 2004.06.21 書き上げ 06.24 アップ ユウナ |