夏。 あいつがやってくる、季節。 毎年素直になれないでいる。今年こそ・・・・・ 夏の月、1日。 朝起きて、髪の毛を整えて着替えて、ドアを開ける。 「よっ。 挨拶に来てやったぜ。」 「何が“来てやった”よ。 別に来なくても全然困らないんだけど?」 あぁ・・・今年も、こうなっちゃった。 毎年、カイが来るのを楽しみにしてるのに、顔をあわせるとこうなっちゃう。 「素直じゃねぇなぁ。 そんなんじゃ、いつまでたっても結婚できねぇぞ?」 「あんたなんかに心配してほしくないわ。 あんたこそ、ナンパばっかりして、結婚してないじゃない。」 口が勝手に言葉をつむぐ。 こんなことを言いたいんじゃないのに・・・ 「俺はいいんだよ。 別に、その気になりゃすぐに結婚なんかできるしな。 それよりお前・・・一年間で太ったんじゃね?」 「・・・・・」 無言で、ハンマーを構える。 「怖いなぁ・・・あ〜、怖い怖い。 っと、あいさつ回りの途中だったんだ。じゃあな!」 そう言って、カイは走り去った。 もうちょっと、一緒にいたかったなぁ・・・ 「やだぁvvカイったら〜vv」 仕事を早く終わらせて、海岸へ行くと声が聞こえた。 ポプリちゃんは、素直でかわいい。 カイのことを好きだっていつも言ってて、それが態度に表れてる。 そんなポプリちゃんを、羨ましいといつも思う。 彼女は、私にはないものばっかり持ってるから。 「カイ、大好きだよvv」 ほら。そういって抱きついているポプリちゃんはかわいい。 私じゃあ、絶対出来ない。 「お前な〜」 カイも、笑ってる。 私が見たこともないような顔で。 「お?来てくれたのか?」 カイが、こっちを見た。 ポプリちゃんに、抱きつかれたまま。 私は思わず、顔を背けて走り出した。 あんなカイは、見たくない・・・・・ 「おいっ!!待てよ!」 ジャスミンの咲き始めた下で、私はカイにつかまった。 何で、ついてきてるのよ・・・・・ 「何で泣いてんだよ!?」 「泣いてなんか・・・・・」 視界がぼやけているのに、気がついた。 私、泣いてるの・・・? 「ポプリちゃんはいいの?」 こんなときまで、私はかわいくない。 どうしたらいいんだろう・・・ 「何でそこにポプリが出てくるんだ!?」 「だって・・・カイ、ポプリちゃんといたじゃない。」 「俺はなぁっ!!」 「なによっ!!」 カイが怒鳴ったから、私も怒鳴り返す。 「ったく・・・かわいくないやつだなぁ。」 「かわいくなくて結構よっ!! でも・・・・・・・・・・・・・ 私はあんたが好きなんだから・・・」 私、今なんて言った・・・? 涙が頬を流れていくのがわかる。 視界がぼやけて、カイの顔が見えない。 今、カイはどんな顔をしてるの? 流れ始めた涙は止まらない。 止めたいけど、止まってくれない。 ふわっ ・・・え? 「泣くなら泣けよ。」 抱きしめられたんだ、と気がついた。 びっくりして、涙が止まる。 私より上にある、カイの顔を見上げた。 「何だよ、泣き止んだのか?」 その顔は優しくて。 今まで、見たことがないぐらい優しくて。 「これ、やる。」 突然緊張したような顔になって、ぶっきらぼうに渡されたのは青い羽。 ・・・え? 「・・・・・」 思わず無言になって、手の中にある青い羽を見つめる。 青い羽って・・・・・確か、プロポーズに使うんじゃ・・・ 「俺、お前のことが好きだ。 だから・・・俺と、結婚しようぜ。」 そういうカイの顔は真っ赤になってて。 つられて、私の顔も赤くなるのがわかって。 「なんで・・・?」 「俺はなぁ、お前のことが最初から好きだったんだよ。 毎年、お前に一番に会いたくて、一番先にお前のところに行ってたんだからな。」 「嘘・・・・・・・」 「でも、お前がいつもそっけないからついからかったりしてたんだよ。」 赤い、照れくさそうな顔。 カイも、私と一緒だったの・・・? 「もう一回、言うぞ。 俺と、結婚してください。」 「はい・・・・・」 一週間後。 私たちは、むせ返るようなジャスミンの香りの中で結婚式をあげた。 ジャスミンは、『素直』の意味を持つ花。 少しだけ、私を素直にしてくれた。 本当に、少しだけ・・・・・・・ +fin+ ===== こちらも合歓梨音子さまのHPでの「海祭り」に出品させていただいたもの。 ですので、こちらもお持ち帰りはご遠慮ください。 ・・・お持ち帰りしたいだなんて方はいないでしょうが(ぇ 文中でも書いてあるとおり、ジャスミンの花言葉は『素直』です。 まぁ、他の意味の方が通ってるかもしれませんが。 音子さまに、『フラワーシリーズ』と名づけられました(笑 『勿忘草の手紙』など、花が出てますからね(笑 2004.08.24 08.30 ユウナ |