カチャッ
ドアが開く音がした。
「ん?誰か来たな。ダリに見舞いかな?」
カイちゃんが言った。
「そうかなぁ。ジェフさんとかじゃない?」
ここは病院なんだし、私だってもう退院するし。
「クレア!!」
聞き慣れない声だった。
それに、お姉ちゃんの名前を言った・・・?
「誰?」
お姉ちゃんもわからないみたい。
男の人が入ってきた。
う〜ん、誰だろう・・・?
なんか見覚えがあるような気も・・・。
「・・・!!だりあ?!一体どうしたんだ!?」
ん?私の名前も・・・知ってる?
お姉ちゃんもカイちゃんもわけがわからないみたい。
「「・・・どなたですか?」」
お姉ちゃんと、一緒のタイミングで言ってしまった。
おんなじように・・・。
そうすると、その人はがっくりと落胆して、言った。
「二人とも俺のこと忘れたのか?
ひどいなぁ・・・。」
そんなこといわれたって・・・。
「・・・・・セイ?
久しぶりだったからわからなかったわ。ごめんね?」
お姉ちゃんが言う。
セイって・・・あぁ!!あのセイ兄かぁ。思い出した。
「思い出してくれたのかぁ。安心したぞ。」
その男の人=セイ兄は本当に安心したように言った。
「ああ、あのセイヤか。」
カイちゃんも思い出したの?
「あれ?ちびカイまでいる?なんでお前ここにいるんだよ?」
ちびカイ・・・
「セイ兄・・・どうしてここにいるの?」
「ちびカイ言うなっ!!もうちびじゃないんだから!!」
私とカイちゃんが言ったのは、ほぼ同時だった。
「だりあとクレアに会いに来たんだよ♪」
セイ兄・・・カイちゃん無視してる。
「おい!!セイヤ!聞けよ!!」
カイちゃんが吠えてる・・・。
「セイ、よくあの人が許してくれたね・・・。」
あの人??だれ?
「ちびカイ、うるさい。
クレア、違うよ。あいつが死んだから来たんだ。」
え・・・?『アイツ』?誰のこと??
「えっ!!本当なの?!」
お姉ちゃんが嬉しそうに言う。
誰のことを言ってるんだろう・・・。
横を見ると、カイちゃんもわかってるようだったけど、複雑そうだった。
「ねえ、お姉ちゃん、セイ兄・・・」
「何だ?だりあ。」
「『あの人』って誰?『アイツ』って??」
私のその言葉を聞いたとたんに、お姉ちゃんとセイ兄のカオが変わった。
「クレア・・・だりあはまだ・・・?」
「うん・・・。忘れてた・・・。」
??なんのこと??
「だりあ、お前はわからなくていいんだよ。」
「そう、だりあは何にも知らなくていいの。」
お姉ちゃんも、セイ兄も何か隠してる。
いまさら隠そうとしても無駄だと思うけど・・・。
「お姉ちゃん、セイ兄。隠さないで。」
私は、短くそれだけを言った。
「「・・・・・」」
お姉ちゃんと、セイ兄は二人して、外に出て行った。
*****外にて。
「クレア、どうする?」
俺は、クレアに向かっていった。
「どうするもこうするも・・・」
「そうだよなぁ・・・。クレア、ごめん!!」
こんなことになったのは俺のせいだ。疑いようもなく。
「いまさら謝ったってしょうがないでしょ?」
お、怒ってる・・・。
「・・・ごめん。
俺のことがわかったからアズサとアイツのことも思い出したのかと・・・。」
「しょうがないわよ、もう。
でも・・・今はだりあには言えないわ。
あの子が・・・自分から思い出さない限り・・・。」
「そうだよな・・・。」
「カイくんがだりあを説得してくれるといいんだけど。」
クレアが、中を窺いながら言う。
なんだか・・・言葉がきつい。
まあ、俺のせいだからしょうがないんだけど。
「なあ、なんでカイがいるんだ?」
「え?ああ。夏はここに来るんだって。」
そうなのか・・・。
「じゃあ、だりあが病院にいるのは何でだ?」
「・・・倒れたのよ。
一人で留守番してるときに。
カイ君がすぐに見つけてくれたんだけど。」
カイが・・・。『約束』は守ってるみたいだな。
「さあ、戻らないと。だりあが心配するわ。」
そうだな。
「わかった。」
*****中では
セイ兄とお姉ちゃんが外に出てっちゃった。
「ねえ、カイちゃん。」
「なんだよ。『あの人』のことなら答えないぞ。」
う・・・先に釘うたれちゃった。
「ダリ、平気だよ。
クレアさんもセイヤもダリのことを一番に考えてるから。
『あの人』のことも時が来たら教えてくれるさ。
それまでは、知らなくていいんだ。」
「それはわかってるけどぉ・・・」
それはわかってる。
お姉ちゃんもセイ兄も私のことを考えてくれてることぐらい。
二人とも、昔からそうだから。
カイちゃんもそうなのかもしれないけど、また少し違う。
「わかってるんなら、あんまり聞くなよ?」
「うん・・・。」
素直にうなづいた。
私も、あんまり二人を困らせたくないし。
「よし。」
カイちゃんは、そう言って私の頭をなでてる。
なんか子ども扱い・・・?
二人が戻ってきた。
「ほれ、言ってやれ。」
カイちゃんが、小声でそう言う。
「うん・・・。」
私も小声で答える。
「お姉ちゃん、セイ兄。
もう、『あの人』のことは聞かない。
でも、いつか教えてね?」
「「だりあ・・・」」
二人ともびっくり・・・してる?
やっぱり、またすごく聞かれるだろうとでも思ってたのかな?
「わかったわ。きっといつか教えるから。」
「うん。」
そのあと、いろいろと話して、お姉ちゃんとセイ兄は帰っていった。
・・・セイ兄はまだいたそうだったけど。
そして、やっぱりカイちゃんは帰らなかった。
私は帰っていいよ、って言ったんだけど・・・。
一途な花には記憶が足りない
一途な花にはわからない
自分が何を忘れているのか
忘れたことさえ忘れていたから。
でも、変わった。少しだけ。
真夏の太陽と明るい夜の月が来たから
太陽と月によって、記憶は動き出す
記憶の穴が埋まる速度が速まっていく
記憶の穴が埋まるのをとめることなんて出来ない
すべてが動き出す―――
記憶を思い出すまであとわずか
『受け取り拒否』は出来ない記憶
それが一途な花を苦しませる記憶だとしても