夏。海の季節。 それなのに人のまばらな海岸に、人が来た。 泳ぐような恰好はしていない。 その人・・・クレアは金の髪を潮風に靡かせて、海岸を歩く。 クレアの足が向かうのは夏にだけ開く、真っ白な海の家。 「お?クレアじゃねーか。」 「こんにちわ。今日も来ちゃった。」 クレアは、静かな優しい声で呟くように言った。 「来てくれて、ありがとうな。」 「うん・・・」 しばらく、静かな時が流れる。 居心地のよい、静寂。 その静寂はポプリの元気な声で消えた。 「カイッ!! お客さん、沢山連れて来たよ!!」 ポプリがそう言うと同時に、沢山の人が海の家へと入ってきた。 「こりゃまたたくさん・・・ クレア、手伝ってもらっていいか?」 「うん、わかった。」 それから、海の家はフル回転。 人が減ったと思えば、また他の人がやってくる。 それが一段落したのは、日が暮れてからだった。 「はぁ・・・ やっと一段落ついた・・・ クレア、ありがとな。」 カイは太陽のような笑顔で、言った。 「ううん、気にしないで。」 クレアはその笑顔を見、静かな笑顔で返した。 帰ろうとせず、カイの傍へと座る。 そしてまたも静かな時間が流れ出す。 『なぁ、なんでそんなに黙ってるんだ?』 『静かなのが好きなの。 カイ君は?静かなのは嫌い?』 『・・・好きだよ』 『一緒だね。』 クレアが初めて海の家に来たときに交わした会話。 それから、クレアは毎日海の家にやってきた。 何を話すでもなく、ただ一緒に過ごすだけ。 午後の一時を共有する・・・ それはカイにとって“日常”でありつつも“日常”でなかった。 「私、そろそろ帰るね。 また明日、来るから。」 「クレア・・・」 帰ろうと腰を上げたクレアを、カイが引き止めた。 「どうしたの?」 いつもと違うカイの行動。 クレアは、少し驚いたような声を出した。 「・・・明日、朝・・・ 朝、海岸に来てくれるか?」 「うん?わかった。 何か・・・あるの?」 「明日まで、内緒。」 少し、いつもと違うカイの様子。 その様子に、クレアは首を傾げている。 「・・・? まぁ、いいや。 明日、朝ここに来ればいいの?」 「あぁ。じゃあ・・・また明日な。」 「うん。また明日。」 クレアは、海の家を出ていった。 「・・・何で、こんなにつらいんだ・・・? 今までは・・・今まではこんなにつらくなかったのに・・・」 カイが、頭を押さえて呟いた。 その呟きは、潮騒に消えていった・・・ 翌日・・・クレアは朝起きてすぐに海岸へと向かった。 海岸へ着くと、そこには荷物を持って立っているカイの姿が。 「クレア、おはよう。 来てくれて、ありがとうな。」 「カイ・・・どうしたの・・・? そんな、荷物持って・・・」 落ち着いた風に挨拶をするカイ。 それにやっと絞り出したような声で、返すクレア。 「昨日で、夏も終わりだからな。 ・・・次の街に、行くんだ。」 カラッとしたように言うカイ。 でも、その声には僅かに寂しそうな、悲しそうな色が滲んでいる。 「また・・・また、来年の夏に来るから。 頼むから、そんな顔・・・しないでくれよ。」 クレアはなんとも言えないような顔をしている。 その瞳には涙が溜まって・・・ 「あ・・・もう出航の時間だ。 クレア、いろいろとありがとうな。」 そして、カイは船に乗った。 「・・・カイ、気をつけて。 また・・・来年。待ってるね。」 やっとのことで、絞り出した言葉。 それは、汽笛の音で掻き消された。 そして、その表情は髪に隠された。 「・・・あんな顔、させたくなかったのにな・・・」 カイが甲板の上、海岸のクレアを見ながら、呟く。 その呟きもまた、汽笛に消されて・・・・・ ===== キリ番7000、ショコラ様へ。 リクエストは『カイクレ』でした。 ・・・微妙ですねぇ・・・・ ちゃんとくっついてないです(苦笑 これのあとに『太陽の居場所』を読むと話がつながるかもです。。 だから、これの後日談(?)が『太陽の居場所』って感じですね。(マテ 微妙におかしい・・・?と思うところがあるかもです。 その辺は、気にせずにw(マテ ショコラ様、返品可能ですのでw 2004.09.03 ユウナ |