第20話・表・下

ランちゃんが、奥に入っていった。
「だりあ・・・どうして?」
お兄ちゃんが言う。
どう答えたらいいのかなぁ。
「えっとね、昔の『夢』、見たの。
『お父さん』に怒られて、お兄ちゃんや・・・アズサお姉ちゃんに
かばってもらってるところと、アズサお姉ちゃんが入院してるところの。
アズサお姉ちゃんは、『私』に気づいてた。
おんなじ『夢見』にはわかるんだって。
で、全部聞いたの。
・・・お姉ちゃんたちと、お兄ちゃんの会話。
アズサお姉ちゃんに聞いてなさいって言われて。」
とりあえず、簡単に話した。
お兄ちゃんも、カイちゃんもびっくりしてた。
「・・・全部、思い出したのか?」
お兄ちゃんが聞く。
「ううん。まだ・・・。
アズサおねえちゃんのことは完全に思い出したんだけど・・・。
『夢見』と『お父さん』のことは・・・。」
それを聞いて、お兄ちゃんは安心したようだった。
「そうか。アズサのことは思い出したか。」
「ダリ、・・・よかったな。」
カイちゃんが言う。
・・・それはどこにかかってるの?
記憶が戻ったから?それとも・・・
「う〜〜〜ん・・・・・。」
お?あ、お姉ちゃんだ。起きたのかな?
「お姉ちゃん、お・は・よ♪」
そばまで行って、呼びかけてみる。
「ん〜〜?だりあ〜?
今、何時〜〜?」
寝ぼけてる、寝ぼけてる。
「もうすぐ、お昼だよ?」
お姉ちゃんは、びっくりして、飛び起きた。
「えっ!?牧場は!?」
「み〜んな、お兄ちゃんがやってくれたよ?
お姉ちゃん、ずっと寝てるんだもん。
酔いつぶれて。おぼえてる?」
・・・私は知らないし、昨日の自分のことさえ覚えてないんだけど・・・。
「・・・覚えてない。まぁ、いいや。・・・頭痛い。
セイヤ、ありがとう。牧場の仕事してくれて。
大変だったでしょう?」
頭痛いって・・・二日酔い?
あ・・・そういえば、私の頭痛、治まったなぁ。
「いや、ポプリが手伝ってくれたから、結構楽だった。
あぁ、手伝ってもらったお礼に、トマトあげたから。」
「うん、わかった。
ポプリちゃんが来るなんて、珍しい。」
やっぱり、お姉ちゃんもそう思うんだ。
「ダリ、クレアさんに言わなくていいのか?
・・・記憶のこと。」
カイちゃんが、小声で私に言った。
あ・・・忘れてた。
どう切り出せばいいかなぁ。
「あ、そうだ。クレア、だりあの記憶が戻ったぞ。」
どう言おうかと悩んでたら、お兄ちゃんが、さらりと言った。
私が悩んだのは何だったの・・・?
「へぇ、そぅ。よかったわね。・・・えぇっ?!」
う〜ん、やっぱり、お兄ちゃんと反応が似てる♪
さすが、双子だなぁ。
「だりあ・・・本当?」
「うん。」
笑って答えた。
「全部、思い出したの・・・?」
言うことまでほとんど同じ?
「全部じゃないよ?
アズサおねえちゃんのことは思い出した。
でも、『夢見』と『お父さん』については、まだあんまり・・・。」
やっぱり、お兄ちゃんと同じ反応をする。
結構、面白いかも・・・。
記憶に関して、お姉ちゃんにいろいろと話して、一段落つけた。
「ねぇ、お姉ちゃん、お兄ちゃん・・・。
一つだけ、聞いていい?
・・・アズサお姉ちゃんは・・・?」
『夢』の中でアズサお姉ちゃんと会って・・・
記憶が戻ってから、ずっと気になっていたこと。
アズサお姉ちゃんは・・・・・?
「「アズサは・・・」」
二人同時に言う。
とても、言いにくそうに。
カイちゃんは、私の後ろで沈黙してる。
「アズサおねえちゃんは?」
なかなか二人が言わないので、せかした。
「アズサは・・・4年前・・・。」
それだけで、十分だった。
予想はしていた。
・・・本人がそう言っていたから。
でも、やっぱり悲しい。
私とそっくりに見えた『アズサ』。
彼女は、もういないんだ。
そう思ったら、涙が流れ落ちた。
起きたときに出た涙と、同じ涙。
悲しみの涙。
流れ出した涙はもう、止まらなかった―――


   「ダリア」の花は涙を流す

   「梓」のことを想って

   きれいなきれいな、悲しみの涙

   自分を守ってくれた「梓」に対する感謝の涙

   自分とよく似た「梓」

   その「梓」への弔いの涙

   「ダリア」の涙は止まらない―――


<<   ダリアTOPに戻る   >>