「あ、これ、借りたんだっけ・・・。」
家に戻ると、机の上に本がおきっぱなしだった。
『夢の花びら』・・・。
すっかり、忘れてた。
「読むのか?ほら。」
本の近くにいたお兄ちゃんが、そう言って私に本を投げてよこす。
投げないでよ、お兄ちゃん・・・。
「物投げていいんだっけ?お兄ちゃん。
これ、借りてきた本なんだからね?」
笑顔で言う。
「ああ、ゴメンゴメン。で、読むんだろ?」
悪いと思ってないな・・・?まぁ、いいけど。
「うん。読む。外で読んでくるから。」
「あ、俺も行く。」
カイちゃんが言った。
・・・なんで?
「カイちゃん、どうして?」
「だって、ダリ一人じゃ危ないし。」
危ないって・・・。
「だって、牧場の中だよ?危ないも何も・・・。」
「いいんじゃない?二人で外行けば?」
お、お姉ちゃん・・・?
「牧場の中って言ったって、危ないものは危ないしな。
ほら、外、行くんだろ?」
そう言って、カイちゃんは外へ出て行く。
何でそうなるんだろう・・・。
私は、木陰に座った。
カイちゃんは、私の隣に。
もう、午後だけど、まだ暑い。
こんなとき、夏だなぁ、って思う。
夏が終わったら、カイちゃんはいなくなる・・・
なんだか、実感してしまった。
「ダリ?読まないのか?」
カイちゃんが私を覗き込んで言う。
「え?読むよ?
ねえ、カイちゃん、どうして一緒に来たの?」
もう一回、聞く。
「そんなの、ダリが心配だからに決まってるだろ?
夏はなぁ、変なやつが多くなるんだから。」
心配って・・・・・。
「ここなら平気だと思うけど・・・?」
「ダメ。用心するに越したことはない!!」
カイちゃん・・・なんか、変な気が・・・。
「ほら、読むんだろ?」
「カイちゃんは?何してるの?」
私が読み始めたら、カイちゃんのすることがないんじゃ・・・?
「俺?気にするな。」
カイちゃんはそういうけど、気になるって・・・。
「考え事でもしてるから、な?」
「なら、いいけど。」
そう言って、私は『夢の花びら』を読み始めた。
『夢の花びら』は、女の子の夢、妖精の夢、人魚の夢の三本立てだった。
どれにも、最後に短い詩がついていた。
その本の、本当に最後の方に人の手で書かれた長めの詩と・・・
どこか・・・別の国の言葉で書かれた文章があった。
こんな詩、そして文章だった。
『夢の花びら』
『夢』は花びら
何枚も集まって、『花』になる
花も、夢も儚いもの
咲いた『花』はいつか散る
散ることのない『花』なんてない
それは、『夢』も同じこと
『夢』を見るのは全ての生きとし生けるもの
うれしい夢、悲しい夢、怖い夢・・・
この世界には、いろいろな夢がある
『夢』は鏡
自分の気持ちを見る『鏡』
心の奥を教える『鏡』
『鏡』はときどき曇るもの
それは、『夢』も同じ
『夢』は未来を見通せる
未来に起こる出来事を
きれいにキレイニ映し出す
それに気づくかどうかは自分しだい
うれしいこと、悲しいことも映し出す
『夢』は記憶
『夢』は過去に起こった出来事を
記憶の底の出来事を思い出させる
思い出したくないことも思い出させる
それは『受け取り拒否』は出来ない
でも、それは『嫌がらせ』じゃない
自分の心からのメッセージ
そのメッセージを理解できるか、出来ないか
それは、自分しだい
たくさんの『夢』がある
『夢見』の夢は『花』になる
『花』は咲けば散る、儚いもの
夢見の『夢』も、それと同じ
その『夢』は咲かせてはいけない、魔の『花』―――
To my precious DAHLIA
I wish your happiness.
I wish you not to make Devil's flower of Dreams.
Because Devil's flower will shorten your life like me・・・
I wish that you will read this someday・・・
この詩を見て、目を疑った。
『夢見』についての詩のようだったから。
この、外国の言葉で書かれた文章は、私には読めなかった。
初めて見る言葉だったから。
でも、なんだか・・・とても懐かしかった。
「ダリ、読み終わったのか?」
カイちゃんだ。
「・・・うん。今、何時?」
どのぐらいの間、没頭してたんだろう。
「今?五時になる。
一時間半ぐらいだな。ダリが本を読み始めてから。」
「そう。ありがとう。ごめんね。」
「なんで謝るんだ?」
カイちゃんが不思議そうにいう。
「え?だって、カイちゃん、ずっといてくれたでしょう?」
「それは、俺がそうしたかったから。
ダリに謝られても困るんだけど・・・。」
でも・・・。
「さあ、中に入ろう。な?」
「うん。」
私たちは、家の中に入った。