家の中に入ると、お兄ちゃんもお姉ちゃんも、キッチンの中にいた。
何かを、作ってるみたい。
「あ、だりあ。本、読み終わったの?」
お姉ちゃんが、私たちに気づいて言う。
「うん。何か、作ってるの?」
お姉ちゃんに聞く。
なんか、においからしてお菓子みたいだけど。
「これ?アズサが好きだったケーキをね・・・。」
アズサお姉ちゃんが好きだったケーキ?
そこにあるのは、りんごの焼き菓子のようなものだった。
「これが?」
「うん。アップルカブラって言うの。」
アップルカブラ・・・
「セイヤは何作ってんだ?」
カイちゃんが、お兄ちゃんに聞いている。
「あ?夕飯。」
夕飯・・・?
まだ、おなかすいてないんだけど・・・・。
「夕飯??つい、一時間前に食べたばっかだろ?」
うんうん。
「いいじゃん。作りたくなったんだから。
ガーリックライスに、スープにサラダ、それにシチュー。」
なんか、量多いし。
「お兄ちゃん・・・私、まだそんなにおなかすいてないんだけど・・・。」
なんだか、不安になって、お兄ちゃんに言った。
「別に、今食えとは言わないから。」
お兄ちゃんが、笑いながら答える。
「ならいいけど・・・」
「だりあ、その本、どうだった?
おもしろかったか?」
お兄ちゃんは、『夢の花びら』に目を留めて、言った。
「え。う、うん・・・。」
お兄ちゃんは、私の答えに怪訝そうな顔をした。
「面白くなかったのか?」
「ううん、面白かったよ?ただ・・・」
あの、最後の詩と文章のことが気になるんだよねぇ・・・。
「ただ?」
お兄ちゃんが、即座に聞き返してきた。
「最後にね、詩と、文章があるの。
文章は外国の言葉で書かれてて・・・
私には読めないんだけど・・・なんか、気になるの。」
私の言葉を聞いて、お兄ちゃんがキッチンから出てきた。
「見せてみろ。」
短く、それだけを言う。
私は、本を渡した。
お兄ちゃんは、詩、そして文章を読んでいる。
「アズサ・・・・・」
文章を読み始めて、一言、そう言った。
「アズサ?」
私は、聞き返した。
「・・・・・・・」
お兄ちゃんは、返事をしない。
真剣に読んでいるみたい。
「だりあ、これは、お前宛の詩と手紙だよ。
・・・アズサからのな。」
お兄ちゃんは、本を閉じて言った。
アズサお姉ちゃんからの・・・?
「これは、お前が、自分で読むべきだ。
俺が、言っていいことじゃない。」
私が、自分で・・・?
「でも・・・・・」
私は、この文章を読むことは出来ない。
「大丈夫。
マリーちゃんのところに行けば、きっと辞書があるわ。」
お姉ちゃんが、言う。
大丈夫・・・?それで?
「俺も行ってやるから。な?ダリ??」
カイちゃんも、言う。
「・・・わかった。
今日は・・・遅いから、明日?」
図書館は、四時までしか開いてなかったはず。
「そうだな。」
カイちゃんが言う。
アズサお姉ちゃんから、私への『手紙』。
何が書いてあるんだろう・・・。
そして八時ごろ、お兄ちゃんの作ったご飯とお姉ちゃんの作ったデザートを食べた。
美味しかった。
なんだか、懐かしい味がした。
お兄ちゃんとカイちゃんは、宿屋に帰っていった。
明日は、牧場の仕事を早く終わらせて、マリーちゃんのところに行く。
お姉ちゃんの『手紙』には何が書いてあるんだろう。
そう思いながら、私は眠りについた。
「ダリア」の読んだ、夢の本
「梓」の書いた、「ダリア」への手紙
この二つは交差した
妹思いの「梓」の手紙
その手紙は、何の手紙?
それは、月のみが知る―――