第25話・裏

もう、朝だ。今は、5時。
一人で起きているのもなんだか癪なので、
ベッドで気持ち良さそうに寝ているカイを蹴り落としてみた。
   ゲシッ  ドッテーーーーーーッン
「・・・・・・・・・」
おや?反応がない。
覗き込むと、カイはまだ寝ていた。
むかついたので、蹴り転がしてみた。
「・・・何してんだよ」
転がったまま、不機嫌そうに目を開けた。
「遊んでる。」
普通に、答えた。
「・・・遊ぶな。」
ちびカイは、不機嫌そうだ。
「あれ?
お前、何持ってるんだ?」
カイの手には、何か、銀の鎖のようなものがある。
「・・・あ?
これ・・・なんだ?」
ちびカイは、俺にその銀色の鎖を見せて、聞いてきた。
鎖に、指輪らしいものが通っている。
でも、そんなん、俺に聞いたってわかるか。
「知るわけないだろ。
何でそんなの持ってるんだ?」
「さあ?」
・・・おい。
「知らないってわけはないだろ?
お前が持ってるんだから。」
ちびカイは、意味がわかっていないらしい。
「しょうがないだろ!?
知らないもんは知らないんだから!!」
本当に知らないのか・・・?
俺の頭の中に、ある言葉が蘇ってきた。
・・・アズサの言葉だ。

『セイヤ、これは知っておいて。
「夢」の中でもらったものは、持ってこれる場合があるの。
この後の「運命」に関するものを、受け取ることがあるの。
まあ、これは「夢見」に関してなんだけど・・・。
「夢見」に深く運命が交差している人についても、受け取ることがあるみたいだから。
これは、覚えておいて。
いつか、きっと必要になるから―――』

あの時、俺は意味がわからなかった。
ひょっとしたら、アズサはこのために・・・? 
「ちびカイ、お前、夢見なかったか?」
念のために、聞いてみた。
まぁ、覚えてはいないだろう。
「ちびカイって言うな・・・。
夢なんか、覚えてない。
・・・でも、見た・・・かもしれない。
どうしてそんなこと聞くんだ?」
見た夢を鮮明には覚えていることはできない。
そんなことができるのは、『夢見』ぐらいだって聞いた。
「前、アズサに聞かされたことがあったから。
“夢見”でなくても、『夢』でもらったものを・・・
『現実』に持ち帰ることができる場合があるってことを。
だから、ひょっとしたら・・・と思ってな。」
「・・・・・。」
ちびカイは少し考え込んでるようだ。
いや、思い出そうとしているのか?
「『夢』は思い出せないぞ?いくら考えても。
『記憶』に刻まれることがないからな。」
いくら思い出そうとしても、それだけは無駄だ。
俺たちには。
「あぁ・・・。
この『鎖』は誰からもらったんだろうな?
『誰か』から、渡された気がするんだけど・・・。
で、何かを、言われた・・・。
それが、思い出せないんだ・・・。」
『誰か』から『何か』を言われた・・・?
『夢』の中で?
そんなことができるのは・・・『夢見』だけだ。
でも、アズサはもういない。
だりあには、無理だ。
となると・・・・・・
一人だけ、思い当たる節がある。
いや、『一人』と言っていいのかはわからないが・・・。
誰かが、階段を上がってくる。
「おはよう!って、もう起きてたの?」
元気な声。ランさんだ。朝から元気だなぁ・・・。
「おはよう、ランさん。」
「あぁ、おはよう、ラン。」
俺とカイはほぼ同時に言った。
「あれ?どうしたの?そのネックレス。
きれいな銀色・・・。
あ、わかった!!だりあちゃんにあげるんだ!」
ランさんも鎖に気づく。
あぁ、ネックレスでもあるか。
「じゃあ、私は向こうの二人を起こしてくるね!
もうすぐ、朝ごはんだから!!」
ランさんは、元気よく部屋を出ていった。
「そうだ・・・。
だりあにあげろって言われたんだ。
だりあから何かをもらったら、代わりにあげろって・・・。」
カイは、鎖を見つめながら、うわ言のように言っている。 
「ちびカイ!さっさと着替えて、下に行くぞ!!」
「ちびカイ、言うなぁっ!!」
ちびカイの表情が変わった。
これなら平気だろう。
俺たちは、朝食を食べて、宿屋を出た。

「あ、カイ〜〜、セイく〜〜ん!!」
宿屋を出ると、ワイナリーのところの角から、ピンクの髪が顔を出した。
「「ポプリ?」」
二人そろって、その髪の持ち主の名前を呼ぶ。
「牧場にお手伝いに行くんでしょ?
ポプリも行っていい?」
笑いながら、こっちに向かって聞いてくる。
・・・聞く相手が違うんじゃ・・・?
普通は、クレアに聞くだろ・・・。
「いいんじゃないか?
なぁ、セイヤ。」
ちびカイは、勝手に返事をしている。
「たぶんな。そのほうが、仕事も楽になるし。」
仕事は楽になった方がいいだろう。
「よかったぁ。じゃあ、一緒にいこ!!」
そう言って、ポプリはUターンして歩き出した。


   太陽は月に遊ばれる

   月が見つけた、銀の鎖

   その『鎖』はなんなのか

   太陽にとって何の意味があるのか

   それは、月にもわからない

   わかるものは、誰もいない―――


   月は「梓」の言葉を思い出す

   全てを知っている「梓」の言葉を

   その『言葉』は何を意味するのか

   それを知るものはもう、いない――― 


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