「こんにちわ、マリーちゃん。」
私は、図書館の扉を開けながら言う。
「こんにちわ。だりあちゃん。本の返却?」
マリーちゃんは、読んでた本を閉じた。
「ううん。
読み終わったけど、ちょっと気になることがあるから調べに来たの。
何読んでたの?マリーちゃん。」
「これ?だりあちゃんと同じ本。
『夢の花びら』だよ。そんなに気になることがあったの?」
二冊もあったんだ・・・。
「うん。最後に、詩と文章があるでしょ?
それが、気になって・・・。」
お兄ちゃんいわく、アズサお姉ちゃんから,私への手紙らしいから。
「え?」
マリーちゃんが、パラパラと、『夢の花びら』の最後のページを開く。
「そんなのないけど・・・」
確かに、そこには、詩、そして文章なんてなかった。
あるのは、たった一言
ダリアに捧ぐ
ってあるだけ。
そして、きれいなダリアの花の写真が載っていた。
・・・どういうこと?
「え・・・そんなこと・・・。」
私は、私が借りた方の『夢の花びら』を開いた。
そこには、詩と文章が。
「どうして・・・?」
マリーちゃんが、小さな声でつぶやいた。
普通、こんなことはありえないことだろう。
「これ、同じ本だよね?」
私は、誰にともなく聞いた。
でも、答えてはくれない。
マリーちゃんも、カイちゃんも。
違う本なんてことはない。・・・たぶん。
でも、同じ本ならきっとこんなことはない。
私の頭は、パンクしそうだった。
「正真正銘、同じ本だよ。
不思議だけど、現実にあるんだから・・・信じるしかないね。」
マリーちゃんが言う。
マリーちゃんは順応性、高いのかな?
「ねぇ、これ、だりあちゃんに関係あるの?」
少しの間、文章を見ていたマリーちゃんが聞く。
「あぁ、セイヤが言うにはそうらしい。
だから、その意味を知るために来たんだよ。」
私のかわりに、カイちゃんが答えた。
「セイヤ?あぁ、あの男の人?」
マリーちゃんは、一瞬『セイヤ』が誰だかわからなかったみたい。
「これは、英語で書かれてるから・・・英和辞典ね。
英和辞典は、そこの棚にあるから・・・」
マリーちゃんが指差した棚から、カイちゃんが辞書を取り出す。
「これか?」
「そう、それ。
これ使えば、読むことはできると思うから・・・
手伝おうか?」
「いいの?」
「うん。友達でしょう?」
『友達』・・・。なんかうれしい・・・。
「よっと。」
カイちゃんが机の上に、三冊の辞書を持ってきた。
結構分厚い。大変そうだなぁ。
私たちは、分担を決めて文章を訳し始めた。
「ねぇ、これ、どの意味?」
「え?それはこれじゃない?」
「あ、そうか!」
「これ、どうやって訳せばいいんだ?」
「それは・・・・・・・・・じゃない?」
「あぁ、そうか。」
こんな会話が何回も続いて・・・・・・・
約二時間後。
「できた!!」
こんな短い文章に、何時間かかったことやら・・・
「よかったね。読んでみたら?」
分担してやったから、全部の訳はまだ読んでない。
アズサお姉ちゃんからの『手紙』・・・
「私のかわいいだりあへ。
私は、あなたの幸せを望むわ。
私はあなたが夢から成る悪魔の花を作らないことを切望するわ。
悪魔の花は私と同じようにあなたの命を縮めてしまうだろうから。
私はあなたがいつの日かこれを読んでくれることを望むわ。」
お姉ちゃん・・・
読んでいるうちに、視界が曇ってきた。
目から、雫が落ちる。
無意識のうちに、涙が流れ落ちた。
「これを書いた人は、だりあちゃんのことが、本当に大事なんだね。
内容は、意味がよくわからないんだけど・・・」
そんな私の前で、マリーちゃんが言う。
「アズサ姉は、ダリのことを本当に大切に思ってたからな。」
カイちゃんも、言う。
「うん・・・」
私は、涙を拭いて、言った。
「あ、だりあちゃん。
これ、もらって。」
そう言って、マリーちゃんが私の前に差し出したのは、『夢の花びら』。
「え・・・だめだよ!
だって、図書館の本じゃない!」
「大丈夫。もう一冊あるし。
ちょっとした手違いで、二冊注文しちゃって・・・。
もらって?ね?」
マリーちゃん・・・
「ん。わかった。もらう。ありがとう・・・。」
「よかったな、ダリ。」
カイちゃんが、やさしく言う。
本当に、いいのかなぁ・・・。
「今日も、何か借りて帰る?」
どうしようかな・・・。
「今日はいいや。やめとく。」
「じゃあ、そろそろ行くか?」
カイちゃんは、もう入り口近くにいる。
気が早いなぁ・・・。
「うん。じゃあ、マリーちゃん、また来るね。
今日は、ありがとう。」
そう言って、私とカイちゃんは図書館を後にした。
『梓』の手紙は謎の手紙
他の本にはなかった手紙
それは何を意味するのか
「梓」は何をどこまで知っている?
「梓」は何を操れる―――
夢見る花は優しい花
野に咲く花のように、優しい花
「ダリア」を『友達』といってくれる
それほどやさしいことはない
「ダリア」にとって、それが一番うれしいこと