第28話・裏

牧場に入ると、だりあ、クレア、それにカイが立ち話をしていた。
とりあえず、声をかけてみた。
「ただいま。
三人ともなんでこんなところで立ち話してるんだ?」
「あぁ、セイ、お帰り。
楽しかった?襲わなかったでしょうね?」
クレアが言う。
襲うって・・・
「襲うわけないだろ!?」
そんな、女を泣かせるようなことはしない。
そんなことをしたら、アズサに顔向けができなくなる。
勿論、だりあにだって顔向けできない。
「二人とも、何の話してるんだ?」
ちびカイが聞いてくる。
あぁ、いたんだっけ・・・。
「え?セイ、ポプリちゃんと一緒にマザーズヒルに行ったから、その感想を。」
クレアが答える。
「へぇ、デートか?」
ちびカイが、俺に向かって聞く。
少し、複雑そうな顔をしている気がするのは気のせいか。
「あれをデートって言うならな。」
正直に答えた。
あれは、『デート』っていうものなのか?
誰か、答えてくれそうなやつに聞いてみたい。
だりあは、なんだか意味がわからなさそうな顔をしている。
「まぁ、そんなのはほっといて。
セイ、実際のところどうだった?」
クレア・・・ほっとくのか?
「案内してもらった。
この町って、女神や河童がいるんだな。」
普通、いないだろ。
常識的に考えて。
「女神様はいるけど、河童は会ったことないなぁ・・・。」
クレアが言った。
どうして『いる』って断言できるんだ?
しかも『会ったことがない』って・・・。
  トントン。
カイが、俺の腕を叩く。
なんだっていうんだ?
そして、俺を端のほうに引っ張っていく。
・・・オイ。ちびカイのくせに・・・。
「なんなんだよ。まったく・・・」
「ポプリのこと。
ポプリから誘われたのか?」
あぁ、そのことか。
「あぁ。お前らが行ったあとにな。」
何で、こいつにこんなこと話さなけりゃいけないんだ?
「そうか・・・」
なんなんだよ。
あ〜、だんだんむかついてきたか・・・?
「ちびカイ、何でお前にこんなこと話さなけりゃいけないんだ?」
「べつにいいじゃん。
へるものじゃないんだし。
ダリに手紙読めたか聞かなくていいのか?」
減りそうな気もするが・・・。
まぁ、やめておこう。
俺は、だりあたちのほうへ戻った。
「で?アズサの手紙の意味はわかったのか?」
だりあの背後から声を掛ける。
だりあは、びっくりしたようだ。
「セイヤ・・・ダリを驚かすなよ。」
俺の後ろから、ちびカイも言う。
「あ、ごめんごめん。
で?どうだった?読めたか?」
とりあえず謝って、本題を聞く。
「うん。でも・・・」
なんだか歯切れの悪い答えだな。
「「でも?」」
思いがけず、クレアと同時に言う。
こういうときに気が合うのはやっぱり・・・。
「私の読んだのにしか書いてなかったの。あの文章も。
もう一冊あったんだけど、それには写真しかなくて・・・」
は?なんだって??
なんだか、信じられないことを聞いた気が・・・
「でも、それでいいんじゃないか?
アズサ姉からダリへの贈り物だと思ってれば。
世の中には、不思議なことだらけだしな。」
カイが言った。
確かに、不思議なことだらけだ。
それは、かなりの説得力があった。
「ま、深く考えない方がいいと思うぞ。」
「深く考えるとよくないわよ?」
またかよ。
本当に気が合う。
まぁ、ずっと一緒だったからな。
「うん。そうする。
でね、これ、もらったの。
マリーちゃんがくれるって。」
だりあは本を見せながら言う。
なかなかうれしそうな顔をしている。
「そう。よかったね。」
クレアが言った。
微笑んではいるが、内心は複雑そうだ。
「あぁ、今日は夕飯どうするんだ?」
少し、腹が減ってきたから、夕飯はどうするのか聞いた。
「ダッドさんのお店行こうか。どうする?だりあ。」
クレアが言う。
・・・飲みたいだけだろ。
「家で食べたい。」
だりあは、そう言う。
さて、クレアはどうするかな・・・?
「え〜〜〜。行こう?ね?」
クレア・・・子供っぽいなぁ。
「行ってきていいよ?
私は家で食べるから。」
だりあはそう言ったが、少し寂しそうな顔をしている。
「でも・・・」
それを見たからか、クレアはまだ何かを言おうとしている。
クレア、お前の頭の中には『譲歩』って言葉はないのか?
「大丈夫、クレアさん。俺、ダリといるから。」
カイだ。
カイは、ずっとだりあ一筋だからなぁ。
だりあのそばを離れたって聞いたときには信じられなかったからなぁ。
「そう?それならいいけど・・・」
クレアは、よほど飲みに行きたいらしい。
「カイ、ちょっとこっち来い。」
こいつは、だりあに害になるようなことをしないとは思う。
思っているにはいるんだが・・・
「なんだよ。」
ほ〜、この俺にその言葉遣いか・・・。
まぁ、聞き逃してやろう。
「信じてるからな?」
それだけを短く、それでも威圧感を込めて言った。
「・・・・・」
カイは、何も答えない。
そんなちびカイをおいて、俺はだりあたちのほうへ戻った。
「じゃ、ちびカイ、ダリを頼んだぞ。
クレア、行くなら行こう。」
カイに言っておいたから大丈夫だろう。
「うん。行こ!!」
クレアは本当に子供のような感じで答えた。
俺は、クレアと共に牧場を出た。


   夜空に浮かぶ月にとっての月の花

   ずっと一緒にいた、月の花

   その扱いも手馴れたもの?

   その月の花は何を思う―――


   いまだ謎の多い『梓』の「手紙」

   その謎が解けることはあるのか?

   それは誰にもわからない―――


<<   ダリアTOPに戻る   >>