第30話

私は、また『夢』の中に来た。
「いらっしゃい。おバカなだりあちゃん。」
『私』がいる。
「馬鹿とは何よ、『だりあ』」
「バカにバカって言って何が悪いの?
だりあ、あなたは馬鹿以外の何者でもないわ。」
「どうしてよ。
あなたにバカって言われるようなことはしてないつもりだけど?」
「指輪、渡してないわよね?
せっかくきちんと名前を刻んであげたのに。」
あ・・・・・。犯人はやっぱり・・・。
「何で、刻んであったの?
あれの理由がわからないと渡す気にはなれないわよ。」
「今後、『必要』になるからよ。
だりあ、あなたが『幸せ』になるためにね・・・。
あぁ、自分の名前で私を呼ぶのは面倒でしょう?
私のことはカリン、って呼んでくれればいいわ。」
幸せになるために『必要』・・・?
「わかった、カリン、ね。

で、カリン。幸せになるために必要ってどういうこと?
あなたは・・・あなたは、何を知っているの?」
カリンは、絶対に『何か』を知ってる。
私が知らない『何か』を。
「・・・」
カリンが私の問いに返したのは、沈黙と微笑。
でも、それは『何か』を・・・
私に言えない『何か』を知っている、と言っているのと同じだった。

「だりあ、指輪は、絶対に渡しなさい。
その指輪とネックレスは、あなたの今後深く関わるものだから。
わかった?カイに、必ず渡しなさい。
『言葉』とともにね。」
『言葉』って・・・。
「そうだ。
私、指輪とネックレス、二組もらったよね?
銀色の方がなかったんだけど・・・。」
カリンは、それを聞いて、笑った。
何がおかしいの・・・?
「あぁ、そっちはいつか戻ってくるわ。
だりあ、あなたがきちんとすれば、ね。」
きちんとすれば・・・?
なにを?何をすれば?
カリンは続ける。
「きっと指輪はあなたの支えになってくれる。
だから、きちんと渡しなさい。
『言葉』とともに。
これは、私からの忠告よ。」
『忠告』?
何か、これから起きるような言い方・・・。
何かが、起きるの・・・?
そんな感じがした。『予感』って言うのかな・・?
「カリン・・・これから、何かがあるの?
あるとしたら、それは防げないことなの?」
こういう『予感』って当たっちゃうんだよね・・・。
「この先、あなたにはつらいことが待っているかもしれないわ。
それは、『運命』なの。
防ぐことはできなくても、『軽減』することはできるわ。」
カリンは、微笑みながら言う。
なんだか、アズサお姉ちゃんに似てる――そう思った。
カリンは、さらに続ける。
「でもね、今、あなたの周りにはたくさんの人がいる。
もう、一人じゃないの。
もう、一人で悩むことはないの。
どうしてもつらければ、私がいる。
『友達』だってできたでしょう?
セイヤだって、クレアだっている。
みんな、あなたを守ってくれるから。
あなたのことを心配してくれる人たちばかりだから。」
うん、私の周りには、人がいる。
友達、と呼べる人もいる。
お兄ちゃん、お姉ちゃん、カイちゃんがいる。
・・・あれ?
今、カリンはカイちゃんのこと、言わなかった・・・よね?
「ねぇ、カリ・・・」
「あぁ、もうすぐ時間ね。
だりあ、絶対に渡しなさいね?
わかった?」
聞こうと思ったら、カリンはそれをさえぎった。
「わかってる。渡すから。」
「じゃあ、またね。」
その言葉を聞いたのを最後に、私は夢の世界から戻ってきた。 


   『何か』を知っている「花梨」の花

   「花梨」は何を知っている

   『花梨』は何のためにいる

   一途な花の『運命』は―――


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