第31話・裏


朝だ。珍しく、カイはもう起きている。
机のところで、何かを見ている。
俺は、気付かれないようにできるだけ静かにカイの後ろまで行った。
カイは、気付いていない。
覗き込むと、そこには何枚かの写真が。
その写真は、俺にとっても懐かしいものだった。
「お前、まだ持ってたのか?」
カイは、本当に驚いたらしい。
「な、何でそんなところにいるんだ!?」
カイが驚いているあいだに、写真をひったくる。
その写真は、みんなで写っている写真。
二枚、あった。
一枚はだりあとクレアが逃げる前に、記念に、といって撮った写真だ。
もう一枚は、それよりも前のもの。
ミールがまだいたときの写真だ。
ミールがいたときのだりあは、屈託なく笑っている。
でも、一枚目の写真の中のだりあは表情がない。
『人形』だった時のだりあだ。
この後、アズサはだりあの記憶を『改竄』した。
そして、だりあは『笑顔』を取り戻した。
・・・『記憶』と引き換えに。
いろいろなことが洪水のように押し寄せてきた。
たかが写真で、これほどまでに思い出せるものか、と不思議に思うほど。
   コンコンッ
ん?誰だ・・・?
ランさんだったら、ノックはしない。
グレイや、クリフも。
「はい。」
そう言って、ドアを開ける。
そこにいたのは、ダッドさんだった。
「おぉ、もう起きてたな。
朝食、できてるぞ。」
今日はランさんじゃないのか・・・
「今日はランさんはどうかしたんですか?」
「ランは、クレアさんの牧場に行ったよ。
カレンたちと一緒に。」
牧場に?
「へぇ。めずらしい・・・。」
カイが、言った。
珍しいことなのか。
「まぁ、そういうことだ。」
そう言ってダッドさんは隣の部屋へ。
俺たちは、着替えて朝食をとった。

牧場につくと、にぎやかな声がした。
「あ、カイ、セイヤくん。
遅かったねぇ。」
ドアを開け、家の中に入ると・・・
カレンさんがなんともえらそうに座っていた。
「な、何でお前らがここにいるんだ!?」
カイが、叫んだ。
こいつ、ダッドさんの話をよく聞いてなかったんだな。
「カレンたちと一緒に」って言ってたぞ?ダッドさんは。
「カイ君、女の子に「お前ら」呼ばわりはよくないと思うよ?」
クレアが、カイに向けて笑顔で言う。
笑顔ではあるが、怖いオーラを放っている。
「ごめん、クレアさん。
・・・気をつけるよ。」
カイも、気付いたらしい。
こういうときのクレアには、逆らわない方がいい。
「うん、それでよし♪」
そんなクレアの背後でカレンさんたちは声を殺して笑っている。
「で?お嬢様方は、どういったご用件で?」
わざと、かしこまった風に言った。
こういうのもたまにはいいかと思って。
「あのね、セイ君。
だりあちゃんを貸してもらいにきたの。」
ポプリが言う。
それは・・・だりあに言うことだろ。
しかも、貸す、貸さないの問題じゃないと思うんだが。
「ちょっと待て。
・・・ダリは物じゃないだろ?」
カイが言った。
これは、カイの方が正しい。
人間は、物扱いしていいものじゃない。
「いいんじゃない?
さぁ、仕事しないと、その話も不完全になるよ?」
よくないだろ、クレア・・・。
「あ、そうか。
じゃあ、仕事しよう!」
ランさんが元気よく言った。
そのために、来たのか。
「あ、だりあはまだご飯食べてなかったっけ?」
まだ食べてないのか!?
「うん・・・。まだ、食べてない。」
だりあが答える。
でも、見た感じ仕度はどこにもしてないぞ・・・?
「じゃあ、だりあちゃんはご飯食べてればいいよ。
その間に、仕事してるから。」
ポプリが言う。
「あ!ごめん、だりあ!
朝ごはん、だりあの分、まだ作ってない・・・」
やっぱりな・・・。
クレアは、きっと何か企んでいる。
そんな気がした。
「えぇ!?
・・・自分で作るよ。」
だりあは、仕方がなさそうに言う。
「カイ、作ってあげたら?朝ごはん。」
カレンさんは、こともなげに言った。
自分で作れるって言ってるんだから、それでよくないか・・・?
「いいよ。私、作れるから。」
ほら、だりあもこう言っている。
「カイ君、作ってあげてくれる?だりあに。」
クレアも、か?
この二人は、何を企んでる・・・?
「いいですよ。ダリ、何が食べたい?」
カイは、快く(?)返す。
まぁ、断ることなんてできないよな。
「えっ!?いいよ。
カイちゃんは、やることがあるんだし。
自分で作れるから・・・」
クレアは、そう言っているだりあのそばに行き、何かを耳打ちしている。
「じゃあ、仕事、開始!!」
クレアの号令で、外に出た。
おや?カレンさんがいない。

少しして、カレンさんが出てきた。
何をしていたんだ?
「カレン、何してたの?」
ランさんが聞いた。
「え?ちょっと、カイをけしかけてきた。」
カイをけしかけた!?
かなり、不安になって戻ろうとしたら、ポプリに腕をつかまれた。
「ダメ。セイくんは、ポプリと一緒に鶏の世話!!」
「そうそう。」
ポプリの言葉に同意している、女の子たち。
その背後には、クレアが。
なんだか、悪寒がした・・・


   何かを企む美しい花たち

   その勢いに月が敵うはずがない

   その『企み』は全て、ダリアを思うが為のこと―――


   月の役目は、『運命』を見届けること

   その『運命』がつらいものだとしても

   ダリアの花の悲しい『運命』

   その『運命』は動くのか―――



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