35話・裏


「こんなもんかな」
汗を拭きながらカイが言う。
ドアはやっと直ってくれた。
「二時間ぐらいで直せてよかったな。
・・・なんか不恰好だが。」
もう少し時間がかかるかとも思ったんだが・・・
カイがいたし。
とりあえず、閉まるようにはなった。もちろん、開くようにも。
どうにも雑さが目立つけどな。
「・・・気にするな、セイヤ。」
しばしの沈黙の後、カイが言った。
「ちびカイ・・・少しは気にしろよ」
少しは気にしてもう少しまともに付けるように努力すべきじゃないか?
「あ、終わった?お疲れさま〜♪」
クレアはいすに座ってのんきにクッキーを食べている。
俺たちが直している間にだりあが焼いたものらしい。
俺たちががんばってる間、のんきに食べてたのか、クレアは・・・
そう思うと、いきなり疲れが・・・・・・
「・・・はぁ・・・」
「なぁに?セイ?」
無意識のうちにため息をついた俺にクレアがすばやく笑顔で聞き返す。
その笑顔が怖いぞ、クレア・・・・・
「いや、なんでもない・・・」
「そう?」
このやり取りが面白かったのか、姫様方は声を殺しつつ笑っている。
・・・まだ、堂々と笑ってもらった方がいい気がするのは気のせいか。。
「ダリ、これ返しに行くか?」
そんな俺たちを無視し、ちびカイがトンカチを持って言う。
「あ、うん。」
「あ!ダメだよ〜」
返事をして外に出ようとした二人に向かい、ポプリが声を上げた。
「カイはここでお留守番。
今日と明日ね。」
「「・・・は?」」
そのポプリの言葉に続けるようにしてランさんが言った言葉を聞き、
だりあとカイは揃って声を出す。よく気が合うことで。
全く何もわかっていないらしい。
そりゃそうだよな。
「だから、だりあちゃん。
カイはおいてみんなで行こう♪」
「ほら、行こ!!」
だりあはまだ意味がわかっていないだろう。
だけど、姫様方はだりあの腕をつかんで引っ張っていく。
・・・引きずる、と言った方が正しいのかもしれない。

「・・・・・・・」
カイが唖然としてだりあたちが出て行って、
開いたままになっているドアを見つめる。
「カイ君・・・
そんなに見てたってドアは閉まらないし、だりあだって帰ってこないわよ?」
キッチンで紅茶を入れながら言うクレア。
いつの間に移動したんだか・・・
「セイ、ドア閉めてくれる?
カイ君が逃げないように。」
「はいはい」「へ?」
俺は言われたとおりにドアを閉める。
逃げることはないと思うが・・・
「クレアさん・・・俺が逃げないようにって・・・」
「え?あ、カイ君は明日の夕方までここから出ちゃダメだから♪」
・・・あえて、口出しはしないことにしよう。
下手に出すと両方からにらまれる。
カイからなら別にかまわないがクレアににらまれるのは遠慮したい。
「・・・あ〜・・・そうか・・・
わかった。おとなしくここにいるよ。」
「わかってくれた?それならいいわ♪
ほら、こっち来て座ったら?」
カイは一人で納得し、クレアに言われたとおりにしている。
そういえば、パーティは毎年の恒例だって言ってたな。



午後六時。
ここには、酔っ払いが二人ほどいた。
ってか、カイ、お前まだ未成年だろ。
まだ17だろ。いや、もう18になるのか・・・・?
でもどっちにしろ未成年には変わりないのに酔っ払うなよ・・・・・
あ、違うか・・・。
『酔っ払うな』じゃなく『飲むな』だよな・・・



   冷静な月

   その月は間違ったことは言っていない

   その月は花の“これから”を見るが役目

   そのときにも間違った言葉を言わないでいられるか―――

   花の為に月はどうする―――




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