『花の気持ち』は、人間に恋した花の妖精の話だった。
私は、時間がたつのも忘れて読んでしまってた。
なんだか、自分のことのような気がした。
カイちゃんは、そんな私のそばにずっといたみたい。
私は、読み終わって本を閉じた。
「ダリ、読み終わったのか?どうだった?」
「うん・・・。面白かった。
・・・カイちゃん、ずっとそこにいたの?」
まだ、余韻にひたっていた私はそう、答えた。
「あ、ひでぇ。
ダリ、本読み始めたらとたんに夢中になってたから、
いったん帰ろうかとも思ったけど、やめたんだよ。」
そうなのか・・・。・・・あれ?
「カイちゃん、お姉ちゃんは?」
「やっぱり気づいてなかったのか。
クレアさん、帰ったぞ。
ダリにも一言言ってったけど・・・・・それも気付いてなかったのか?」
う〜ん、覚えてないや。
「うん。覚えてない。」
「ダリ、ちゃんと返事してたよな?」
え?返事・・・したのかなぁ。
「わかんない。私、返事してた?」
「あぁ。してた。」
え〜?覚えてない。わかんない。
「生返事だったからひょっとしたら・・・とは思ったけど・・・
本当に気づいてなかったのか。
話しかけられても気づかないほど面白かったのか?」
面白い、というか・・・
「ま、まぁね。でもカイちゃん向けじゃぁないと思うよ?」
「ふぅん。別に読もうとは思わないし。」
そういえば、カイちゃんってそんなに本は読まないよなぁ。
「ねぇ、カイちゃん。」
何か言わなきゃいけないことがあるような気がした。
「ん?」
「・・・・・あれ?なんだっけ。」
何を言えばいいのかわからなくなってしまった。
何だったっけ?ホントに。
「は?ダリ、ぼけるにはまだ早いと思うんだけど・・・。」
カイちゃん・・・それ、結構失礼。
「まだぼけないもん!!まったくもぅ・・・!」
「わりぃわりぃ。だってなぁ・・・・・」
「だって・・・何?」
私は、極上の笑顔を浮かべて言った。
こんなカオは、怒ってるときぐらいにしかしない。
=このカオは怒ってるときのカオ。
それは、カイちゃんもよく知ってるはず。
「・・・ゴメンナサイ。」
少しの間をあけて、カイちゃんが言う。
「別に謝れとは言ってないんだけど?」
「いや、カオがそう言ってた・・・。」
やっぱりカイちゃんはよくわかるなぁ。
「別に、怒ってないし?」
笑いながら言う。
「・・・・・」
カイちゃん、私が絶対怒ってるって思ってるな。
本当はもう怒ってないんだけど。
っていうか、もとから怒ってないし。
「ね〜ね〜、カイちゃんカイちゃん、秋になったらいなくなるってホント?」
話を変えて、ずっと聞こうと思ってた、でも聞けなかったことを聞いてみる。
前、ポプリちゃんに聞いてたんだ。
夏にだけ来る男の子がいるんだよって。
その時は、カイちゃんのことだだなんて思ってもいなかったから・・・
どうせ、会わないしと思ってたから、よく聞いてなかった。
だから、カイちゃんに聞きたかった。
カイちゃんの口から教えてもらいたい、と思って、何回か聞こうとした。
でも、聞けなかった。
だって、それを聞いたら・・・
また、カイちゃんがいなくなったときみたいになっちゃう気がして。
たぶん、そうなるって思ってた。
でも、きっと今なら平気。今、聞けば平気。
何でかわからないけど、そう思う。
「・・・わから・・・ない。」
「どうして?」
カイちゃんの、その意外な答えに、私は少なからずびっくりした。
「・・・。ダリがいるから・・・かな?」
そんな答え、予想してなかった。
「・・・。でも、カイちゃんの仕事でしょ?」
「別に。もう、いいや。」
カイちゃんの答えは少しだけ、うれしくもあった。
でも、悲しくもあった。
「・・・平気だよ。私は平気。
だって、カイちゃんまた夏には来るんでしょ?」
私は、笑顔で言ったつもりだった。
「・・・っ!」
カイちゃんの反応を見て、私のカオがどんなカオになってるのか、わかる気がした。
きっと、今、私のカオは泣きそうな顔になってる。
でも、それを一生懸命こらえてるカオ。
「平気。だから、行っていいの。ね?」
カイちゃんは、観念したように言った。
「わかった。行く。
・・・でも、行くまでの間はダリと一緒にいさせてくれ。」
「何でそんなこと聞くの?」
「え・・・?」
「そんなの、いいに決まってるじゃない。」
そんなのわざわざ聞くまでもない。
だって、私はカイちゃんが好きなんだから。
何で、好きな人に一緒にいてくれって言われて、ヤダって答えなきゃいけないの?
そんなこと、答えるわけないじゃない。
ダリアの花は実を結ぶ。
真夏の太陽のおかげで実を結ぶ。
熟れるのはいつ?
それは・・・太陽のみが知る。