第12話

『花の気持ち』は、人間に恋した花の妖精の話だった。
私は、時間がたつのも忘れて読んでしまってた。
なんだか、自分のことのような気がした。
カイちゃんは、そんな私のそばにずっといたみたい。
私は、読み終わって本を閉じた。
「ダリ、読み終わったのか?どうだった?」
「うん・・・。面白かった。
・・・カイちゃん、ずっとそこにいたの?」
まだ、余韻にひたっていた私はそう、答えた。
「あ、ひでぇ。
ダリ、本読み始めたらとたんに夢中になってたから、
いったん帰ろうかとも思ったけど、やめたんだよ。」
そうなのか・・・。・・・あれ?
「カイちゃん、お姉ちゃんは?」
「やっぱり気づいてなかったのか。
クレアさん、帰ったぞ。
ダリにも一言言ってったけど・・・・・それも気付いてなかったのか?」
う〜ん、覚えてないや。
「うん。覚えてない。」
「ダリ、ちゃんと返事してたよな?」
え?返事・・・したのかなぁ。
「わかんない。私、返事してた?」
「あぁ。してた。」
え〜?覚えてない。わかんない。
「生返事だったからひょっとしたら・・・とは思ったけど・・・
本当に気づいてなかったのか。
話しかけられても気づかないほど面白かったのか?」
面白い、というか・・・
「ま、まぁね。でもカイちゃん向けじゃぁないと思うよ?」
「ふぅん。別に読もうとは思わないし。」
そういえば、カイちゃんってそんなに本は読まないよなぁ。
「ねぇ、カイちゃん。」
何か言わなきゃいけないことがあるような気がした。
「ん?」
「・・・・・あれ?なんだっけ。」
何を言えばいいのかわからなくなってしまった。
何だったっけ?ホントに。
「は?ダリ、ぼけるにはまだ早いと思うんだけど・・・。」
カイちゃん・・・それ、結構失礼。
「まだぼけないもん!!まったくもぅ・・・!」
「わりぃわりぃ。だってなぁ・・・・・」
「だって・・・何?」
私は、極上の笑顔を浮かべて言った。
こんなカオは、怒ってるときぐらいにしかしない。
=このカオは怒ってるときのカオ。
それは、カイちゃんもよく知ってるはず。
「・・・ゴメンナサイ。」
少しの間をあけて、カイちゃんが言う。
「別に謝れとは言ってないんだけど?」
「いや、カオがそう言ってた・・・。」
やっぱりカイちゃんはよくわかるなぁ。
「別に、怒ってないし?」
笑いながら言う。
「・・・・・」
カイちゃん、私が絶対怒ってるって思ってるな。
本当はもう怒ってないんだけど。
っていうか、もとから怒ってないし。
「ね〜ね〜、カイちゃんカイちゃん、秋になったらいなくなるってホント?」
話を変えて、ずっと聞こうと思ってた、でも聞けなかったことを聞いてみる。
前、ポプリちゃんに聞いてたんだ。
夏にだけ来る男の子がいるんだよって。
その時は、カイちゃんのことだだなんて思ってもいなかったから・・・
どうせ、会わないしと思ってたから、よく聞いてなかった。
だから、カイちゃんに聞きたかった。
カイちゃんの口から教えてもらいたい、と思って、何回か聞こうとした。
でも、聞けなかった。
だって、それを聞いたら・・・
また、カイちゃんがいなくなったときみたいになっちゃう気がして。
たぶん、そうなるって思ってた。
でも、きっと今なら平気。今、聞けば平気。
何でかわからないけど、そう思う。
「・・・わから・・・ない。」
「どうして?」
カイちゃんの、その意外な答えに、私は少なからずびっくりした。
「・・・。ダリがいるから・・・かな?」
そんな答え、予想してなかった。
「・・・。でも、カイちゃんの仕事でしょ?」
「別に。もう、いいや。」
カイちゃんの答えは少しだけ、うれしくもあった。
でも、悲しくもあった。
「・・・平気だよ。私は平気。
だって、カイちゃんまた夏には来るんでしょ?」
私は、笑顔で言ったつもりだった。
「・・・っ!」
カイちゃんの反応を見て、私のカオがどんなカオになってるのか、わかる気がした。
きっと、今、私のカオは泣きそうな顔になってる。
でも、それを一生懸命こらえてるカオ。
「平気。だから、行っていいの。ね?」
カイちゃんは、観念したように言った。
「わかった。行く。
・・・でも、行くまでの間はダリと一緒にいさせてくれ。」
「何でそんなこと聞くの?」
「え・・・?」
「そんなの、いいに決まってるじゃない。」
そんなのわざわざ聞くまでもない。
だって、私はカイちゃんが好きなんだから。
何で、好きな人に一緒にいてくれって言われて、ヤダって答えなきゃいけないの?
そんなこと、答えるわけないじゃない。


   ダリアの花は実を結ぶ。

   真夏の太陽のおかげで実を結ぶ。

   熟れるのはいつ?

   それは・・・太陽のみが知る。


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